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憧憬

憧憬

 

 

僕は迷っていた

もう少し待てば雨は小降りになるのか

それとも土砂降りになるのか

 

外は戦場のような雨が降っていた

 

6時限の体育のときだった

僕は雨が降ることに気がついたのだ

雨の匂いがしたからだ

 

それは土埃と混ざり合った

僕だけにしかわからない匂いだった

 

授業が終わる頃

校庭を覆うように雲が現れた

僕は傘を持っていなかった

 

学校から家までちょうど1000歩なのは知っていた

走れば700歩くらいになるのだろうか

僕は確信のない計算をしていた

 

だけどひとつ疑問があった

走るのと歩くのでは

どちらが濡れてしまうのだろうということだ

 

そんなことを思い出しながら

駐車場まで走った

 

車に乗ると

僕は持っていたカバンを助手席に放り投げ

ハンケチで服を拭いた

僕は安全を確保したかのような気持ちになり

ホッとため息をついた

雨はもう外の出来事のようになってる

 

エンジンをかけてワイパーのレバーを下げる

扇型に現れる視界の中を家まで帰った

 

あの日の答えはまだ出ていない

 

走るのと歩くのでは

どちらが濡れてしまうのだろう