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石川五右衛門

石川五右衛門

 

 

五右衛門風呂の意味を知ったのは

僕が8歳くらいのときだった

 

父方の家は「福岡県行橋市長井の浜」というところにあった

ほぼ海岸沿いに位置し

砂浜までは歩いて1分もかからなかった

 

五右衛門風呂はそこにあった

 

釜風呂の真ん中に丸い板が浮いており

その板の真ん中に足を置いて

板がくるりと返らないよう上手に乗らなければならない

 

田舎の風呂はみなこうなのだと思い

それほどの疑問はなく湯に浸かっていた

 

ある日テレビを観ていた

石川五右衛門」という時代劇だった

 

天下の大泥棒「石川五右衛門

 

金持ちから金品を強奪し

貧乏な商人、町民、農民に金をばらまいた

 

ある日とうとう正念尽きた五右衛門

怒った殿様に死罪を言い渡された

 

釜ゆでの刑

 

ぐつぐつと煮えかえった油の中に

子供ももろ共入れられるのだ

 

「泥棒の子は泥棒になる」という

殿様の考えだった

 

飛び込みプールの羽板のようなところから

子供を頭上に持ち上げ釜に身を投じた五右衛門

 

子供だけは助けたいと願う親心だったのだろうが

あまりの熱さに耐えきれず

抱え上げていた子供を下敷きにした

 

その下敷きになった子供が

釜風呂に浮いていた板だという意味を知った

 

間もなく田舎の家は改築され

風呂に板も無くなったが

いまでも湯船に洗面器が浮いていると

五右衛門風呂の板を思い出す

 

大人になって

釜ゆでの場所が三条河原だと知った

殿様が秀吉だと知った

分からないのは五右衛門の気持ち

 

熱くて子供を敷いたのか

一瞬でこの世から去らせようとしたのか

石川五右衛門

悪名高い大泥棒

 

弱い者に愛されて死んだ「石川五右衛門

君はどう捉えるか