じょーじゃんじゃないよ。
寅ちゃん、死んじゃったからなぁ・・・。
「男はつらいよ」を、初めて観たのは、中学2年生ときだったでしょうか。
「こんな大人が、こんな愛すべき人がいるだろうか」
と、思いましたね。
それから、正月は、毎年欠かさず観続けました。
渥美清さんは、小学生のころ、
テレビドラマ「泣いてたまるか」で、知っていました。
元都知事の、青島幸男さんと、主演を1週ごとに交互でやっていましたね。
当時、青島幸男さんは「意地悪ばあさん」を、やっていましたので、子供に人気が高く「泣いてたまるか」も、周りでは、青島幸男さんの回を観てる子供が多かったんです。
僕は、両方とも観ていましたが、何だか、毎回、切なくなるのは、渥美清さんの方でした。
そんな、渥美清さんの「男はつらいよ」でしたが、なぜ、観に行くことになったのかは、覚えていないですね。
大人が観る映画でしたから。
観られている方も、多いとは思うのですが、
毎回、始まりは「寅(とら)」の夢から始まるのです。
夢の中では、さっそうとしてるんです。二枚目を演じるんですね。渥美さんの、あの容姿でしょ?渥美さん演じる「寅」が、二枚目ぶって格好つけるのが、おっかしくて、おっかしくてたまらないのですよ。
「男はつらいよ」ファンというのが、もう全国にいるわけで、「寅」が登場すると、拍手が起こるんです。
僕は、全作観ています。東京に出て来て、2年目。まだ、誰もビデオデッキなど持っていませんでしたが、僕は「男はつらいよ」を、観るためにデッキを買いました。
そのシリーズでは、毎回、マドンナが現れましてね。
ストリーでは、そのマドンナに「寅」が惚れるのですが、恋は実らず、失恋した「寅」は、旅に出るというのを繰り返すのです。
お約束なのです。
日本映画史上、これほど愛された男がいるでしょうか。
全48作品です。
1作目から48作目まで、どこを覗いても、そこには昭和の良き日がありました。
いつだって、懐かしいのですから。
そうそう。
第10作目。マドンナは「八千草薫」さんでした。
この回は、印象的でしたね。
毎度、フラれる「寅」。
そして、お約束で、マドンナ「八千草薫」さんに、コクるのです。
マドンナには様々な理由があり、「寅」を選ぶことができません。しかし、その「八千草薫」さんの回は、違ったのです。
突然でした。
「あたし、寅ちゃんならいいわよ・・・。」
そんなことを言われた「寅」は、ぶったまげます。
「寅」は、自分がやくざな風来者であることをよく知っています。
あのシーンは、忘れません。
その言葉を聞いた「寅」は、カクっとなり、
「じょーじゃんじゃないよー。」
と、しどろもどろに返すのです。
マドンナの未来を、自分が汚してはならないという、気持ちですね。
あの間と表情。
忘れることはありません。