もう20年以上前かな?

もっとかな?

 

それを、なぜ思いついたのか覚えていませんが、

 

「あるモノをあるモノに変換させ、それを信号で送り、受け取る側が、

 それを元の形に変換させる」

 

これを、レコーディングに応用できないかと考えたのです。

そうすれば、海外レコーディングなどというものはなくなると。

 

例えば、ロンドンのスタジオで、プレーヤーが鳴らした音源を、

日本のスタジオで再現させることができる。

 

当然、タイムラグは起こるでしょうが、

別に、リアルタイムで、それを再現する必要はない。

 

どうせ、録音なのですから、テンポさえ認識し合って入れば、

トラックごとに修正ができる。

 

この発想は、画期的だったですね。

 

僕は、スタジオを持っていましたので、当時、この発想を、大手のスタジオに持ちかけ

ました。確か、6つのスタジオが、この発想に賛同してくれ、実現化に向かって動いた

のです。

 

僕のスタジオを入れると7つということになります。

 

ところが、いつのまにか大手の6つだけで、

それに着手し、発案者の僕は外されてしまいました。

 

もちろん、世界初の出来事でしたので、

回線の確保で、ずいぶん苦労していたようです。

 

当時は、ただの電話線。

膨大な情報ですので、信号や変換、様々な案件の前で、足踏みをしていました。

 

もう、すでに始まってしまったこと。

あとで、外されたことに文句を言っても、ただのあがきにしか捉えられません。

 

「あれだけの大手が集まっても、出口が見えないのなら、

 電話線では限りがあるのだろう。」

 

発想の転換をやってみました。

 

そこで、思いついたのが、衛星を使うということでした。

これに関しては、もう、大手には伝えず、

独自のネットワークで、実現可能であるかどうかを投げかけたのです。

 

答えは、

 

「YES」

 

でした。

 

電話線よりも、多くの情報が送れることもわかりました。

あの日の興奮は、今でも、覚えていますね。

 

海外のミュージシャンは、24時近くまで、スタジオで作業するこなどは、

ほぼ、ありません。

 

しかし、日本のミュージシャンは、スタジオの時間貸しから、

ロックアウトシステムという、丸一日貸しを利用していましたので、

朝の11時(スタジオによって違う)ごろから、翌朝の10時近くまで、

1日料金で使用できたのです。

 

それを、利用すれば、アメリカやイギリスのミュージシャンの時間帯に、

僕ら、日本のミュージシャンが合わせればいい。

 

理論上は問題がありませんでした。

ところが、物理的な問題の壁が立ちはだかりました。

 

衛星を使用するのに、1ヶ月間で「6千万円」かかるということがわかったのです。

 

あくまで、衛星の使用料金ですので、

「スタジオ代」「ミュージシャンのプレイ料金」は、別途料金となります。

 

海外レコーディングは、移動、宿泊などに、大きな出費がかさみます。

レコーディングスタジオ、そして、有名なプレイヤーだとしても、ギャランティは、

日本のミュージシャンと、それほど変わりません。

 

向こうに行けば、気分も違いますし、写真なども撮影できる。

当時は、写真の背景が外国という、ただそれだけで、

世の中の興味が違いましたからね。

 

結局、この衛星を使ったミュージシャン需要では、

1ヶ月6千万を埋めることはできないだろうとの理由で断念いたしました。

 

しかし、スタジオのスタッフには、こう伝えました。

 

「そのうち、今の電話線は、ただの電話線ではなくなるだろうね。

 今回、オレたちができなかったことが、一瞬にしてできる時代になると思うよ。

 それが、何によってかは、わからないけれども、世界中がリアルタイムで結ばれ

 る。海外レコーディングなんて、何の売りにもならなくなるから。」

 

その、

 

「何によってかは、わからない」

 

ものは、光ケーブルの誕生でした。

 

あの頃「光ケーブル」なんて発想はありませんでしたが、

やがて、何かによってそうなることは、予想していました。

 

昨日、昼に、ロスのスタジオと僕の仕事部屋がリアルタイムで繋がり、

向こうで、演奏されたトラックを受け取りました。

 

楽曲をビルトアップさせるために、さらなる注文をいたしましたので、

今日、それが、再度届きます。

 

国内だけで収めるべきものは、確かにあるでしょう。

しかし、多くの物事は、常にワールドワイドを意識しなくてはなりません。

 

「この国では」

 

と、いうセリフは、時に応じて使うものだと思うのです。

 

だって、この時代において、良いものは、世界が求めるものであることは、

間違いないからです。

 

特に、企業などは、そうでしょう。

「大きくなった」で、満足している間に、

海外企業が、難なく、この国に足を伸ばしてくるのですから。

 

言い換えれば、音楽産業も、そうなのだと思います。

国内にとどまらず、海の向こうに手を伸ばし、

そして、足を運べば聴いてくれる人は生まれます。

 

この気持ちは、失いたくないと思っているわけです。

 

今日、8月25日。

CHAGE&ASKA」は。38周年を迎えました。

 

来月の21日は、ASKAソロの30周年を迎えます。

 

どこまで続くか、どこで止まるかなど、そんなものには、

なんの興味もありません。

 

どれだけ、音楽に情熱を向け続けることができるか。

 

その上に、いろんなものがあるだけのことだと思うのです。

 

最近、若いミュージシャンに洋楽を聴かない人たちが増えています。

それは、洋楽に刺激を受けてきた邦楽アーティストが、

 

「如何にも!」

 

のような、タネを植え付けて来たからでしょう。

 

国外アーティストはすごいぞ!

 

常に、世界がマーケットなのですから。

視野が違います。

 

よって、生み出す音楽も違うのです。

 

音楽で世界を変えることはできませんが、

その時代に生きる人の心を豊かにすることができます。

 

音楽をやる人の喜びは、

いつの時代も、そこに向かわなくてはならないと思うのです。

 

ASKA