「10円。」-5-

「どうされました?」←BGM  SAY YESスタート

 

             「 10円。」第5章

 

浮いてます。光の中で売り子さんが浮いて見えます。先ほどのパーサーの制服ではなく、純白のロングドレス、頭に女神の王冠をつけ、袖まで伸びた、シルクの手袋。その手には光るスティック。そのスティックを「えいっ!」って振って。お願いだから、この車掌を消してしまってください・・・。お願ぇしますだ・・・。

 

いや、ダメだ。私はイレブン。哀願しているところを見せるわけにはいかない。

 

「ミャー。プースースン。」

「イレブン、お口。ハンカチ。」

 

ハンカチを噛んだままでした←小芝居すんな!!

 

「いやぁ。パーサーさん。」

「何か、ありましたか?」

「大したことではないのだよ。」

「あ、そうですか。」

 

そのまま、通り過ぎられては・・・。

ここ、重要。あなた主役。

 

「ち、ちょっと、待ってぇ!」

「はい?」

 

これまでの経緯を伝えました。「10円ください」とは、決して言いませんでした。

 

ゴーーー

 

パーサーが車掌に何かを告げています。顔の前で、扇ぐように手を振る車掌。僕には、誰も知らない力があるのです。心を読めるのです。

「それはできないよ」と、車掌が言ってます←手を振りゃ誰でもわかりますよ!!

 

パーサーの眉毛が工藤静香になっています。あれは、

「いいじゃないですか。イレブン、困ってますよ」の眉です。

兵士の訓練で取得した読唇術です。←みんな、無視でGOしましょ

 

ゴーーー ←車内

 

ふたりの会話は1分ぐらいだったでしょうか。

車掌が、こちらに向かって歩いてきました。

 

「イレブン、もし、新大阪で降りたとしたら、どうやって精算しますか?」

 

きた、きた、きたっ!!!

 

「私には、アイデアがあるのです。」

「アイデアと言いますと?」

「私、新大阪降りる。改札出口行く。職員呼ぶ。話す。一度外出る。

 コンビニ探す。現金引き出す。駅戻る。払う。」

        ↑

    お前、ナニ人だよ!!

 

「ちゃんと、精算しますね?」

「イレブン、守る。約束。」←だから、ナニ人だよ!!!!

「いいでしょう。もう、入場券で新幹線に乗ることはやめてください

 よ。いいですね?イレブン。」

「はい。もうてぃまてん・・・。」

 

全てシナリオどおりに行きました←どの口で言ってんだよ!!

 

そして、新大阪到着。改札出口。職員との会話。

 

「あのー・・・。」

「おー!イレブン。どうしました?」

「いや、新横浜でね。痴漢を見つけてね。もみ合いになっちゃって、開い

 たドアにもつれ込んで入ってしまったのだよ。気がつけば、ここは大

 阪って言うじゃない?びっくりしてしまったよ。」

「車掌から、連絡受けてますよ。」

「ごめんなさい・・・。」

「10円、ないですって?」

「ま、世間ではそういう話になってるみたいだね。」

「10円ですよ。ホントに持ってないんすか?じゅーえんですよ?」

 

カチンとくる言い方すんなぁ・・・。だから、無いんだよ!!

 

「一度、外に出してくれないかな?キャッシュカードでお金をおろして、

 戻ってきますので。」

「それはできません。イレブン。」

「ってーと、何かい?このイレブン、10円詐欺るとでも、おめーさん方

 思ってるのケ?」←ねらわない、狙わない。それほど、面白くないから

「クレジットカードは?」

「知ってます。」

「お持ちではないかと、尋ねています。」

「持っています。と、答えます。」

「では、それで精算しましょう。」

「じゅーえん・・・を?」

「はい。10円を。です。」

「どこの世界に、10円をクレジーットカードで払う変わりものがいるん」

「行きますよ。」

「はい。」

 

そこは、改札口から100メートルぐらいのところにありました。

職員が職員に話をしてます。

 

「イレブンが10円持ってらっしゃらなくて、クレジットで10円精算願え

 ますか?」

「えっ?あ、イレブン、こんにちは。」

「こんちには。」←はい。みなさん復習です。読み間違いしてませんよ

 ね?

 

かくして僕は、無事10円を払い終え、極秘任務、サミット会場へ向かうこととなったのです←小料理屋の息子さんの結婚式な!

 

しかし、払い終えたと言っても、その時点では一文無しです。

タクシーに乗るのが怖い。新大阪駅構内を歩いている人が、みんな、

僕を陥れようとしてる相手のスパイに見えてしまうのです。

          ↑

         どこの?

 

つづく・・・。

 

ASKA