アガスティアの葉

 

あれが本当なのか、トリックなのか、未だに謎です。それは「アガスティアの葉」と、言います。3000前とも言われていますし、5000年前とも言われています。その葉には、そこに訪れた人の分だけの葉が用意されており、訪れた人の一生が、その葉に記述されています。訪れない人の葉はありません。なので、そこに訪れる人は3000〜5000年前から決まっていたということになります。

 

僕は、運命論者ではありません。大まかな未来予想図は手渡されて、または描いて生まれてくるのでしょうが、その人の生き方で、別なものに変化してゆくのだと思っています。例えば、机の引き出しの中に、小さな小石を放り込むようなものです。そのまま、じっとしていれば、与えられた人生。しかし、空間は引き出しの大きさの分だけあります。移動するごとに、位置は変わります。

隣の引き出しには移動できません。自分が身を置いた、その引き出しの空間分だけの運命がある。自分の行動によってたどり着く位置が変わると言えば分かりやすいでしょうか。

 

アガスティアの葉」は、南インドのタミル地方一帯の寺院に保管されています。先ほども書きましたが、そこを訪れた人の分だけしか、用意されていません。聖者アガスティアが書いたことから、その葉を「アガスティアの葉」と呼ばれています。以前から興味はあったのですが、インドの奥地まで行く気にはなれませんでした。と、いうことは、僕の葉はないということになります。

 

10年ほど前のことでしょうか。知人から電話があったのです。

 

アガスティアの葉って知ってます?」

「ああ、知ってるよ。」

「行きませんか?」

「いやぁ、インドまでは行けないなぁ。」

「いえ、その葉が日本に来るんですよ。」

 

僧侶が、「アガスティアの葉」の束を抱えて、日本に来るというのです。人が、足を運んで来るのも運命、そして、「アガスティアの葉」が海を越えるのも運命。どちらにしても、出会う人だけが出会うもの。なるほどと思いました。

 

 

そこは、県境にある建物の一室でした。到着後、間もなく部屋におとされました。恰幅の良いインド人の僧侶?ヒーラー?が、目の前に座りました。適切な言葉がないので、その人をヒーラーと呼びましょう。「アガスティアの葉」に書かれている文字は、古代タミル語であるという説明を受けました。それは、知っていました。以前、テレビの番組で、「アガスティアの葉」が放送されていたのを観ていました。古代タミル語を研究されている方が、その葉に書かれた文字を見て「間違いなく、タミル語です」と、説明していた場面を覚えていたのです。

 

まず最初に、ヒーラーから言われたことがありました。

 

「今から、質問をつづけますが、『Yes』か『No』だけで、答えて下さい。」

 

例えば、僕は1958年2月24日生まれですが、ヒーラーが選んだ葉に、それが書いてあります。

 

「1960年生まれですか?」

「No」

「では、次の葉にいたします。」

「1958年生まれですか?」

「Yes」

「5月生まれですか?」

「No」

「では、次の葉にいたします。」

 

こういう風に、自分の葉に間違いないという葉が出てくるまで、延々と繰り返すのです。1時間内に自分の葉と出会す人もいれば、5~6時間かかる人もいる。一日出て来ない人もいる。そういう人は、別の寺院に行くのです。結果、数日、かかる人もいます。しかし、そこに行った人には、必ずあるのです。それが「アガスティアの葉」です。ヒーラーは、言いました。

 

「右手の親指の指紋をとらせてください。」

 

その指紋に近い束ごとに分けられた束を探すのです。男性は右手の親指。女性は左手の親指。指紋をとり終わると、ヒーラーはしばらく奥の部屋に入って行きました。20分程待ったでしょうか。ヒーラーが、大きな束を抱えて戻って来ました。これから何時間かかるのでしょうか?丸一日費やすのでしょうか?その葉は、茶色に変化した、薄い板のようになっていました。僕は、言いました。

 

「信じていないわけではないのですが、この模様を、すべて録音させていただいてもよろしいですか?」

「構いませんよ。」

 

そして、僕の一生が書いてある葉と遭遇する時間が始まりました。

 

「この葉ではないですね。次に行きます。」

 

30分程して、僕の誕生日の書いてある葉が出てきました。ドキドキしましたが、その葉ではありませんでした。

 

「あなたの生まれは、東京ですか?」

「あ・・。Noです。」

「では、次の葉に行きます。」

 

今日、出て来ない場合は、明日も来なくてはなりません。翌日も、スケジュールは空いていましたので、覚悟を決めました。

 

1時間半を過ぎた頃でしょうか?

 

「出生地はFUKUOKAですか?」

「Yes」

「お父さんの名前はKATSUMIですか?」

「・・。Yes。」

「お母さんはE?EKOですか?」

「Yes。EIKOです。」

 

心の中で、思いました。「嘘だろ・・。」ヒーラーは、空に向かって呪文のような歌を歌いながら、突然質問をしてきます。

そして、その葉からは、家族全員の名前が出てきました。

 

「あなたの仕事は、音楽ですか?」

「Yes。」

「はい。この葉が、あなたの葉です。」

 

僕の一生が書いてありました。日本古来の武道をやってること。若い頃に、世の中に名前が出ること・・。

 

「海外で、仕事をやることになります。」

「はい。もうやっています。」

 

ここでは書けない、いろんなことが書いてありました。僕の、一生に沿ったことが書いてありました。直ぐ隣りに座っていたコーディネーターの方から、

 

「こんなに早く、葉が出てくるのは珍しいですよ。ご縁があったんですねぇ。」

 

アガスティアの葉」によれば、僕は64歳までは生きてることが確認できました。その年に、あることがあるのです。良いことも、悪いことも書いてありました。前世が、何という名前であったか。何の仕事をしていたか。どういう経緯で、この世を離れることになったのか。もちろん、今回の事件を思わせるようなことも書いてありました。それでも、歌を歌っていくことが使命のようなことを言われました。希望を失わず、一生懸命に生きれば、この葉に書いてある人生を全うすることができるとのことでした。そして、最後に言われたのです。

 

「あなたが死ぬ日を知りたいですか?」

「即座に、No.と答えました。」

 

この世を離れることを知っての人生を送るようなことはしたくなかったからです。金額は、予想以上に高かったです。伝えられたことは、確実性の高いことでしたが、これが商売になっていることに、些細な抵抗があったのです。

お金を、惜しんだということではありません。なぜ、そんなに費用がかかるのかを知りたかったのです。ヒーラーは答えました。

 

「あなたが前世で犯した過ち。それから、これから起こすであろう過ち。それらの業を浄化させるために、インドの若い修行僧が、あなたの代わりになって、7つの寺院を訪ね、歩き続けます。カルマを落とすのです。その修行僧にとっては、修行。あなたにとっては浄化です。」

 

僕の代わりに、約2ヶ月間歩き続けると言うのです。腑に落ちました。

 

「よろしくお願いいたします。」

 

僕は、運命論者ではありません。しかし、その日までのできごとは克明に書かれておりました。引き出しの箱の中の空間いっぱいに用意された運命のどの位置に向かって進んで行くのか、僕にはわかりません。じっとしていては、与えられた運命。しかし、自分が希望を持って進んで行けば、違うところへ行ける。

つまり、運命は変えられるのだと思っています。

そして、時々思い出すように浮かべています。

アガスティアの葉」は本当なのか、トリックなのか。未だに分かりません。

ASKA