テレビ

今から、考えると、C&Aのデビューというのは、破格というか驚異的というか、あの頃起こった出来事は、何が何を呼んだのだろ?と、思っているのです。

 

以前、このブログでお話させていただきました、アマチュアの時の単独ファーストライブは、無謀にもホールで行いました。キャパ800人のホールでした。

 

当時のアマチュアは、音楽のリバプールと言われている福岡でも、数十人のライブハウス。少し、名前の売れたアマチュアでも100人ほどの場所。

 

僕たちは、全く苦労を知りませんでしたので、といより無知でしたので、ライブというものは、ホールでやるものだと信じ切っていたのです。

 

当日蓋を開けてみれば、1000人を超えるお客さんが集まってくれました。

 

当日の出来事は、瞬く間に福岡の音楽業界に広がり、今でも、その記録は破られていません。おそらく日本の音楽業界においても、アマチュアが1000人を超えるオーディエンスを動員したのは、僕らだけだと思います。

 

間も無く、その噂は東京でも知られることとなり、身なりのいいレコード会社の方々が福岡まで会いに来てくださいました。

 

僕らに「プロデビュー」という文字が、頭にインプットされたのは、その頃でしたね。

 

しかし、僕らは「プロデビュー」の前に、果たさなくてはならないことがありました。YAMAHAのポピュラーコンテストで、グランプリを獲得し、世界歌謡祭に出場するということでした。

 

バカですよねぇ・・・。

 

ギターを始めて、まだ3年ほどの若造が、本気で世界歌謡祭に出場することを決めていたのですから。

 

そうなると信じていました。

 

先日のお話で言うところの「引き寄せの法則」だったのでしょうね。

 

コンテストでは「つま恋」の本選会に2連続で選ばれ、グランプリを獲得することはできませんでしたが、わずか4年目でプロデビューとなりました。

 

ギターを始めて4年目でプロデビューですからね。まぁ、ありえません。

 

しかし、今、振り返っても、そうなるイメージがしっかりあったのでしょね。

世間に名前が売れることも信じて疑いはありませんでした。

 

全く、どこまで世間知らずだったのでしょう。

 

プロデビュー前に、週刊「セブンティーン」に、3回掲載されました。

巻頭グラビアで。水着で。

         ↑

        嘘です

 

そのような出来事も、当たり前のように感じていました。

おそらく「セブンティーン」の歴史でも、そんなアーティストは僕ら以外、誰もいないと思っています。

 

何もかも規格外でした。それでも、その頃は、そういうものだと信じ切っていましたからね。

 

「フルサイズの譜面はないのか?」

「え?」

「フルサイズだよ。フルサイズ!」

 

夜のヒットスタジオ」という、当時、月曜夜 10時から1時間のお化け歌番組のリハーサル直後、プロデューサーから、突然言われた言葉でした。

 

通常、出演歌手は3分半がせいぜいでした。僕たちは新人にも関わらず、4分半をもらいました。ジュリー、山口百恵ちゃん扱いの4分半ですから、僕らの所属レコード会社などは、もう驚きの持ち時間を与えられたのです。

 

デビュー曲「ひとり咲き」は、フェードアウトタイムが5分27秒でしたので、

生演奏で、当然しっかりとしたエンディングにすると、5分半を超えるわけです。

 

「あ、あります!!!」

 

リハーサルを、横で見守っていたレコード会社の担当が、慌てて飛び込んできました。

 

「(譜面は)どこにある?」

「か、会社にあります。」

「取ってこい!!」

 

ポカーン・・・。僕らは、そんな表情をしていたと思います。

わけがわからなかったのです。

 

新人の身でありながら、当日の本番はフルサイズで演奏しました。

翌日からの売れ行きは、まぁ、驚きでしたね。

 

僕らのテレビ出演の定義はフルサイズとなりました。

 

歌番組では、ほぼフルサイズでしか出演しませんでした。

 

そして、今、後悔していることがあります。

いわゆるブレイクを迎えた辺りから、テレビサイズにしたことです。

 

売れると敵も増えてきます。

業界では「C&Aはフルサイズしか要求しない」という、傲慢なアーティストのイメージが広がり始めたからです。

 

僕らは「思い上がってる」「調子に乗ってる」と、言われ出したことに危機感を感じてしまいました。

 

「良い人」に、なろうとしてしまったのです。

 

楽曲にはストリーがありますので、テレビサイズでは、楽曲の本当の良さを伝えることができません。

 

一度、テレビサイズを受け入れてしまうと、もう元に戻すことはできなくなりました。歌番組のスタッフにも、新旧交代がありますので、いつの間にか、テレビ出演の打ち合わせでは、昔の僕らのスタイルを知らないスタッフが現場を仕切るようになると、当然のように、テレビサイズが約束となってしまいました。

 

元々、「テレビにはあまり出演しない」という活動方針でしたので「それなら出演しなきゃいい」は、今でも、守っています。

 

僕の、僕らのテレビ出演が少ないのは、そういうことが背景にあります。

 

テレビ出演は「ミュージシャン活動」において、極力抑えなくてはなりません。ベテラン枠で、今尚、ポジションを持ち、活動しているアーティストが、テレビに出ていない人ばかりだということに気づかれている方はいますか?

 

テレビは「ここぞ!」という時のプロモーションツールであり、テレビをプロモーションの軸に活動したアーティストの寿命が短いのは証明されています。

 

テレビ局側も、それは知っているのですが、時間枠の中で、たくさんのアーティストを紹介するには、楽曲のサイズを短くする以外ないのです。

 

歌番組が急激に減った原因は、楽曲がつまらないからです。つまらないというのは、「楽曲がつまらない」のではなく、歌の力を存分に伝えることが、できないからだと思うのです。

 

「昔からテレビサイズはあるじゃないか?」

 

そうですね。ありました。しかし、娯楽の少なかった昔のテレビサイズのあり方と、出演者の多さにより、迫られるテレビサイズでは意味が違います。

 

音楽業界の衰退の原因のひとつには、このようなことも含まれています。

 

インターネットの出現により、尚更テレビ離れに拍車をかけています。

 

「そのうち、制約のないインターネットでの歌番組が主流になる時代が訪れるよ。」

 

よく、スタッフに話してきていたことです。

 

その境目が、とうとう訪れたと感じています。

 

「テレビ局に、いろんなことを制約されることなく、当然フルサイズで、世の中に見てもらえるものを、相手と一緒になって作って行く。盛り上げて行く。」

 

「オンリーワン」の時代となった今のプロモーションのあり方だと思うのです。

 

「見逃した・・・。」

「録画しなきゃ・・・。」

 

音楽業界においての「オンデマンド」とは、いつでも、観たいと思う人が、

時間にとらわれず、アクセスするだけで、それを観ることができる。

録画などしなくてもいい。

 

そんな時代が、音楽業界に訪れました。

 

それでも不特定多数の視聴者に受け入れられる音楽番組の制作方法というのが、まだ、テレビにはあります。

 

このままでは、ネットに占領されてしまうでしょう。

ポジションを奪われてしまうことを、ただ黙って見ているのではなく、

まずは、共存を考えなくてはならないと思うのです。

そのアイデアは、ありますよ。

 

 

ASKA