Hi-Lo pick

ある日、ライブのリハーサルの時でした。

これだけ音響機器が進んでますので、わずかな音にもミュージシャンは拘りをもっていますし、
耳も良くなってる。

と、いうことはオーディエンスの耳も肥えているはずだと。

ギターには、オーソドックスな 6弦ギターと、更に音を拡げる12弦ギターがあります。
楽曲を表現する上で、それは使い分けられますが、一般的には6弦ギターがほとんどです。

鳴らせば12弦ギターの方が美しく聴こえますが、どうしても弦を張り替える手間、そしてチューニングの煩わしさから6弦ギターを持つミュージシャンが多いのです。

ふと、思い付きました。

「ピックを2枚重ねにしてみたらどうだろう?」

あの薄いピックでも、2枚が弦に当たる時に、タイムラグが起り12弦ギターの響に近くなるのでは?

それをリハーサルでやってみたのです。

ASKAさん、今日、ギターの鳴りがいいですねぇ!!」
「分かる?」
「音が、広がってますよね?」

最初に気が付いたのは、ASKAバンドのギター、古川(ふるちゃん)でした。

「ほら?これ。ピックを2枚重ねで弾いてるんだよ」
「これ、ギターの歴史が変わりますよ。それ、早くパテント(特許)を取って、製品化しましょうよ」

ある会社に、それを持ち掛けましたところ、

「非常に興味はあるが、薄いピックを2枚重ねて作る手法が思いつかない」

とのことでした。

これは、大きな会社でなくては、実現化するのは難しいだろうと思ったのです。

そこで、僕が選んだ会社は「音」を追求することに貪欲な「ステレオサウンド」さんでした。
楽器メーカーがピックを作るより、オーディオメーカーがこれに目をつけることの方が面白いと思ったのです。

まったく別の畑ですからね。

すぐに開発に乗り出そうということになりました。

ここからが、大変だったのです。

通常のピックの厚さは、約1ミリです。
ただ2枚重ねにしてもダメなのです。
もちろん、1回のストローク(弾くこと)で2回弦に当たるわけですので、当然響きは変わります。

きっと、ここまでは、多くのミュージシャンなら経験済なはずです。

ただ、ストロークは垂直ではありません。
プレーヤーによって、それは様々ですが、僅かに斜から入ってきます。

2枚のピックのタイムラグを最大限に生かすには、
2度弦に当たるよう2枚のピックをズラす必要がありました。

最大限に効果的な角度。

 

ここを選ぶにも時間が掛かりましたが、更に、先端に幅を作らなくては・・・。

2回鳴るのを特長とするならば、先端の縦の幅はできるだけあった方がいい。
そこで僕らが選んだ会社が、

超微細精密切削加工メーカー「入曽精密」さんでした。

弦に当たる部分を、更に薄くなるよう設計してくれたのです。
通常より薄く作られた2枚のピック。
その先端を更に薄く削り上げ、タイムラグを起す。

2枚のピックは、接着剤で張ったような物はダメ。
直ぐにバラけてしまいます。

「ビスで固定させましょう」

その発想はありませんでした。
あんな薄いピックを、どうやってビスで固定するのでしょう?

「超薄型ビスを開発しましょう」

日本の精密技術は世界一ですからね。

 

「ピックの概念が変りますよ」

このプロジェクトを立ち上げて、開発成功まで半年以上費やしました。

最初のピックは「チタニウム」で製造いたしました。
よくピックが見当たらない時に、10円玉で音を鳴らしたりしていました。
「キラリ」と鳴るのです。

ただ、やはり、ピックのしなりは必要でしたので、通常のポリアセテートピックに変更したのです。

最初の「チタニウムピック」を、購入された方。
今ではレア物ですので、無くさないようにしてくださいね。

パワーは「チタニウムピック」に軍配が上がりますので。

僕は、自分が発案者であることを、ほとんど語って来ませんでした。
鳴り音が、上下に広がることから、僕はこれを、

「Hi-Lo pick」

と、名付けました。

ここに来て、やっと、ギタリストの間で「Hi-Lo Pick」の存在が語られ始められましたので、そろそろ紹介をしても良いかなと。

ボーカリストの発案では、それほど広がらないと思いましたので、極力自分の名前は伏せました。
6弦ギターで、擬似12弦ギターとなる

「Hi-Lo pick」

一枚、一枚が、全て手作業で作られていますので、値段は普通のピックの10倍以上します。
1枚、1600円くらいだったかな・・・。

しかし、ギタリストなら、一人一枚手にしても良いピックだと思います。
とにかく、音が広がりますので。

弾き方により、どんな音に変化していくのか未知のピックです。

みなさんは、すでにお聴きになっているのですよ。
「Rocket ツアー」の時に、僕が「SCRAMBLE」のイントロで、思い切り鳴らした音。

いつもの音と違う!?

と、思われた方がいらっしゃったと思います。
あの音が「Hi-Lo pick」の音なのです。


2枚重ねギター・ピック【Hi-Lo Pick】ギタリスト古川昌義氏 実演
https://www.youtube.com/watch?v=rXX40poHbsU


【REVIEW】世界初!2枚重ね Hi-Lo Pick サウンドチェック/Ovation iDea
https://www.youtube.com/watch?time_continue=49&v=XfjZrELGuhQ


2枚重ねのギターピック(Hi-Lo Pick)とノーマルピックの弾き比べ
https://www.youtube.com/watch?v=_-NZAnFbT3M


どうです?
ぜんぜん、音の鳴りが違うでしょう?

世界中のミュージシャンに広がればと、思っています。



ASKA

 

www.fellows.tokyo